考察4.ヨコハマ買い出し紀行はサイエンス・フィクションなのか?


 考察2.アルファには○○○はあるか?の最後の方で「私はSF=サイエンス・フィクションまたはファンタジーの世界の住民だから,ミサゴを…」と書いたけど,それじゃ,「ヨコハマってほんとはどうなんだろう?」というのが今回の話題です.

そもそも,サイエンス・フィクションってなに?なわけですが,みんなの強い味方・Wikipediaによると『科学的な空想にもとづいたフィクションの総称。』[1]とある. また,私も含めたおじさんやGGの味方・広辞苑によると『科学・技術の思考や発想を基礎とした小説。ヴェルヌの「海底二万里」やHGウェルズの「タイムマシン」「宇宙戦争」の類。科学小説。』[2]

 ヨコハマ買い出し紀行は,海面上昇で低地が水没した世界で,アルファはじめロボットの人や,ターポンという高空を飛ぶ巨大な飛行機が登場してくる未来のお話だから,背景として科学技術的な発想を背負っていると言えるだろう.ココネがA7シリーズの歴史を知ろうとする話もあるし,読み込むほど科学技術的背景について考えさせられる作品である.なるほど,サイエンス・フィクションだ. 実際,SF作品に与えられる星雲賞のコミック部門で2007年に受賞している[3]

 でも,その一方で,ミサゴや水神様など不思議な存在が出てくる.ファンタジーの世界の住人としては,それらは妖怪・もののけの類と考えている.しかし連載当時とあるファンサイトでその話をふってみたら「ヨコハマはSFだからそれはないだろう」という答えが返ってきた.その方はミサゴ=ロボット説を採っていて根拠も自サイトで挙げられていたから,その意見も納得できたのだけど.

 そもそもファンタジーとは,『魔法やその他の超自然的・幻想的・空想的な事物をプロット・主題・設定などの主要な要素とした作品が属するジャンルである。』(Wikipedia)[4]とか『@空想。幻想。白日夢。A幻想曲』(広辞苑)[5]だったりするわけで,ミサゴや水神様を超自然的な存在と捉えれば,ヨコハマはファンタジーなのかもしれない.サイエンス・フィクションにファンタジー的要素を入れた「サイエンス・ファンタジー」って言葉もあるぐらいだから,ヨコハマはそれなのではないだろうか?

 ところで,ファンタジーだけどしっかりサイエンス・フィクションをやってる作品のうちで,私が知ってる範囲で最強のやつは「グイン・サーガ」(栗本薫)[6][7]かも.剣と魔法の中世的な世界で豹頭の男グインが活躍するヒロイック・ファンタジーだけど,グインと,そしてグインと戦う超常的な存在達は異世界から機械で転送されてきた生物だったりとか星船が出て来たりとか,神や悪魔,魔法を科学的に説明してみたりとかSF的要素が散りばめられている.(※そもそも現代の科学技術も,分からない人には魔法みたいなものだしね:p) グインが今後どう展開していくか興味があったけど,作者の栗本さんが亡くなってしまい完結せずに終わってしまったのが大変残念…

 閑話休題.ヨコハマ買い出し紀行はさらにもう一つ,「空気漫画」(空気系,雰囲気系も含まれる)というジャンルを開拓した作品としても知られている.ストーリーよりも,BGMみたいにまったりした雰囲気を楽しむ作品でもあるので,好きな人にとってはたまらないけど,人によっては「これがどこが一体面白いの?」と拒絶されるなど,万人ウケするわけでなく好き嫌いが分かれ,ある意味読む人を選ぶ作品でもある.

 という感じで,ヨコハマ買い出し紀行はサイエンス・フィクションでありファンタジーであり空気漫画でもあるさまざまなジャンルにまたがる作品ですが,こういうのを一言で表す言葉は無いだろうか.…それがあるんですよ,そこの奥様.「スペキュレイティブ・フィクション」という言葉が! 『さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語。フィクションの複数のジャンルにまたがって使用される』[8]ようですが,たいへん便利な言葉ですね.しかも省略するとさらに簡単になって「SF」の2文字(笑

 実はこの考察,サイエンス・フィクションについて調べているうちに,「スペキュレイティブ・フィクション」という言葉があることを最近知って,「それだ!」と思ったから取り上げたんですけどね(苦笑


参考資料
[1]サイエンス・フィクション(Wikipedia)

[2]岩波書店「広辞苑」(新村出編):第三版では二五八頁

[3]星雲賞(Wikipedia)

[4]ファンタジー(Wikipedia)

[5]岩波書店「広辞苑」(新村出編):第三版では二〇七〇頁

[6]グイン・サーガ(Wikipedia)

[7]アニメ版グイン・サーガオフィシャルサイト

[8]スペキュレイティブ・フィクション(Wikipedia)