第51話「やまのあな」(旧版6巻,新装版4巻)に登場するトンネルは,セリフと描写から割と簡単に特定できる.
・アヤセ:「にいがたからぐんまの国への道中」
「メインイベントの山越えだったわけだが」
「湯沢のあたりでオヤジにだまされた」
まず”にいがたからぐんまの国””湯沢”というキーワードから上越国境ということがすぐ分かる.
試しにほかの新潟−群馬ルートを考えてみると…奥只見シルバーラインの一連のトンネル群も地底探検の趣があるけど,トンネルを抜けたとき只見川の源流域だからまだ日本海側であり,太平洋側の空気は感じられないだろう.それにそこからさらに奥只見湖−尾瀬ヶ原−沼田と大回りすることになり結構な登山になってしまうという欠点がある.夏の奥只見−尾瀬というと魅力的なルートだけど,軽装のアヤセはパス(^^;
津南から中津川渓谷を通って秋山郷に入り野反湖から群馬に入るという手もあるけど,これだと10kmもあるトンネルなんて無いし,アヤセが死にそうだからパス(^^;
…脇道に逸れたので軌道修正.上越国境のトンネルというとこれだけ挙げられる[1]-[3].
・三国トンネル(全長1,218m)…三国峠ルート
・清水トンネル(全長9,702m)…清水峠ルート
・新清水トンネル(全長13,490m)…清水峠ルート
・大清水(だいしみず)トンネル(全長22,221m)…清水峠ルート
・関越トンネル上り線(全長11,055m)…清水峠ルート
・関越トンネル下り線(全長10,926m)…清水峠ルート
ここで原作を読み返してみると,
・湯沢のオヤジ:「話のタネに 一度歩いておきな 大トンネル」
「三国峠の方はふつーに越えたい人だけが行く道だよ!」
・アヤセ:「トンネルは10キロ以上あるという」
これで国道17号線が通る三国峠ルートが落選して,清水峠ルートであることが分かる.※うるさいことをいうと,大清水と関越は谷川岳の真下を通っている.
そして原作の描写を見るとかなり広い円形断面のトンネルであることが分かり,JR上越線の清水トンネルと新清水トンネルは狭いので落選.
残るは,関越道の関越トンネルと上越新幹線の大清水トンネル.だが,大清水トンネルの出入口は緩衝工があって円形でないから,旧版6巻p118下のコマのトンネルを抜けたときの描写と違うし,またコンクリートスラブ軌道だからそれを壊すか埋めるかして平らにする手間を考えると落選か(^^; ということで
関越トンネルがめでたく当選! パチパチパチ…
ここまでは簡単だったけど… 上り線と下り線の2本トンネルあるよ… トンネルの中にあった峠の茶屋”MIDWAY”はアヤセの進行方向右側にあり道路脇の段差が見られない.追い越し車線側には例の段差は無かったはずだから上り線の可能性がある. ただ,トンネル内のあちこちにあってそこだけ少し広くなっている非常駐車帯の所にもあの段差は無いからそこなのかもしれない.もしトンネルの中で店を構えるのなら,あの時代でも車は通るだろうから,車にぶつけられないよう非常駐車帯のくぼみに店舗を造るだろう.
だがしかし,非常駐車帯は走行車線・追い越し車線の両側にあったように記憶してるから,そうすると上り線・下り線が特定できなくなる.もし店の裏に2つのトンネルの間にある避難坑へつながる入口があれば上り線と断定できるけど,ハッキリと見えないからこれ以上は掘り下げないことにしよう〜(マテ
”やまのあな”=「関越トンネル」は以前からファンの間で特定されていたし,自分もそう思っていたけど,改めて調べてみましたって感じですか.
余談だけど,上越国境のトンネルを眺めていると,そのままトンネルの歴史になってるよね.
最初は長いトンネルを掘れないから,清水トンネルみたいに標高の高い所にトンネルを造ってそこまでループ線なりつづら折りの道を上がってトンネルに入っていく.
だけど時が経って,技術が進んで長大トンネルを掘れるようになると,新清水トンネル,そして関越トンネルや大清水トンネルと,標高がだんだん下がっていってる.
でさ,アヤセに大トンネルを勧めた湯沢のオヤジよー,三国峠ルートも神立とか芝原とか貝掛温泉のとことか結構急な坂道を登らないといけないし,特に三国トンネルは入口で標高1100m付近にあって(関越トンネルは入口で標高630m程度・トンネル内でだいぶ上り下りがあるのかもしれませんがね)あそこまで昇るのも大変.たしかに大トンネルみたいに暗い穴の中を行く楽しみは無いけど,それでも”ふつー”には越せないよ?(^^;
ついでに書くけど,”やまのあな”を抜けてアヤセが感じた「太平洋のにおい」.日本海側と太平洋側を何度も行き来しているから分かるけど,トンネルを抜けてすぐ分からなくてもしばらく進むとやっぱり空気が違うよね.匂いの違いまでは分からないけど,気温とか湿度とか.
夏はどちらも暑いけど暑さの質が違うし(よく”夏の日本海側は涼しいだろ”と誤解されてるけど,実は湿度があるから,太平洋側の人がこちらに来ると気温の数値以上に蒸し暑く感じるはずw),冬は太平洋側では空っ風でお肌ガサガサだけど,日本海側はしっとりすべすべw
夏のトンネルの中は外よりも気温が低く湧水もあるので湿度が高いせいもあるにしても,トンネルを抜けた途端に空気が変わったと分かるアヤセの感覚はすごいな.最後に… アヤセの足だと2,3時間もあれば”やまのあな”を抜けられただろうけど,谷川岳PA辺りから渋川まではまだだいぶあるからガンバってねw (※水上まではすぐだから,そこで一服するのかも)
参考資料
[1] 三国トンネル (国道17号)(Wikipedia)
[2] 清水トンネル(Wikipedia)
[3] 関越トンネル(Wikipedia)